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山行リスト/2023/7/16/横尾本谷右俣

Last-modified: 2023-08-15 (火) 01:09:55 (261d)
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山行日2023年7月16-17日
山域北アルプス
ルート横尾本谷右俣〜南岳〜奥穂〜紀美子平〜岳沢〜上高地
メンバー三ツ堀、水流

記録

【記・水流】

三ッ堀さんから横尾本谷のお誘いを頂いた。穂高の様な岩稜帯で沢登りとは正直イメージ出来なかったが、情報を仕入れルートを調べるうちに物凄い興味が湧きました。

当日、前夜泊し沢渡駐車場で車中泊した後、上高地まで乗り合いタクシーで進む(ジオパークだけでなく第2駐車場のタクシー乗り場までちゃんと来てくれる)上高地バスターミナルで降りて行動開始。何気なさげに会話しながら進むが三ッ堀さんの足の速さは相当のものだ。

明神、徳澤など要所要所で一息入れながら進むが歩測が早く勾配が増した時に付いて行けず厄介者にならないか心配になる。

横尾から屏風岩を見ながら、ルートの説明をして貰うと行ってみたい気持ちが出てくる。「良いですね。行きたいですね。」とつい口を滑らすと「行くためには何をしないといけないかしっかりと考える事」と真剣に取り組まねばならない事を痛感した。

ダラダラとした上り坂を本谷橋まで進むと、川岸に登山者が大勢休息して居るが、その中で異色にヘルメットを被り沢の遡行を始める。そこから数百メートルも進むと大岩が被さり河床を添って進めなくなる。早速の高巻きだが30メートル程の藪漕ぎで突破出来た。

涸沢との二俣を過ぎると雪渓となる。スノーブリッチとなっていて踏み抜いて落ちたら生死に関わるので慎重なライン取りが必要だ。また、シュルンドにも注意をした。先へ進み左俣の分岐で左は大キレットと思うと穂高の深部に要るんだと自覚する。

右俣を進むと雪渓は消えたが傾斜が深まりゴルジュとなり沢登りらしくヘツリを多用して進むが、私(ツル)が1回ドボンして右靴が完全浸水した。幸い水面に近かったのでこれで済んだが、高いヘツリは落ちたらタダでは済まないので緊張して進む。

残地ロープの有る大岩をフリーで乗っこしゴルジュを抜けると小鳥がさえずりお花畑の楽園のカールへ出た。まるでアニメのラピュタの様に美しい所だ。今度はテン泊したいですねなど話しながら一服する。

その後、カールの詰めはかなりの急斜面で這いつくばって登ると天狗池からの一般道に出た。飛騨側はガスっていて稜線は見えないが、何の不安もない整備された道を進み、南岳山頂を踏む。雨がパラついて来たがそのまま数分下って南岳山荘のテント場に着いた。天候が不安なので急いでテントを張り、私は山荘でビールを頂くと五臓六腑に染みる旨さだ。ビールを買い足してテントに戻りチビチビとやっていると眠気に襲われ仮眠を取った。しばらく寝て夕食の支度を始める。私はアルファ米だが三ッ堀さんは無洗米を炊飯している。炊き上がりはふっくらとしてとても美味しそうで次は真似をしようと思う。食事が終わり日没の時間を迎えるがガスっていて眺望は得られないのでやる事が無く、暇なので床に就き就寝した。

明けて17日は雲一つない快晴の天気に恵まれた。この日は大キレットを通って北穂高→涸沢岳→奥穂高岳→吊り尾根→岳沢→上高地と地図のコースタイムは12時間を歩く。

テントを撤収して先ずは大キレットを通過する。前回来たのは2017年でクライミングを始める前でおっかなビックリだったが、今回は全く怖くなく鎖もほとんど使わなかった。岩の耐性が付いたのだと嬉しかったが、慢心で事故を起こさない様気を付けたい。

しかし、三ッ堀さんの足が速い事。気にせず先に進んでいてくださいと伝えるが、あまり待たしてはいけないのでヒイコラと登るとピークでお疲れさんと迎え入れて下さる。それを北穂、穂高岳山荘、奥穂と続け吊り尾根を通過していると長野県警ヘリが救助を行っていた。救助者は150m滑落して落命していたと後で知る。その時はどれ程の滑落事故か分からないが、歩きやすい道でも失敗すると大変な事が起こると心にカツを入れる。

紀美子平に到着した後は上高地まで下りだけとなるのでそれぞれのペースで下山する。三ッ堀さんは当然直ぐに視界から消えるが、先行者に詰まり中々自分のペースで進めないようだ。岳沢小屋を過ぎると気温が上がり汗だくになり河童橋に到着。行動開始から8時間半だった。

今回、予定している夏山縦走に備えてどうしても歩いておきたかったし、高度順応もしておきたかったので、中央アルプスの縦走と思っていましたが、三ッ堀さんにお誘いを頂き、一日目は穂高の秘境の楽園を冒険の様にたどり着き、二日目は最高の眺望の中でトレーニングと最高の山行でした!お誘いいただきありがとうございました。

【記・三ツ堀】

たまたま3連休の日程が確保できたので、単独で赤木沢や赤石沢などを考えていた。が、腰の調子が悪い。アプローチも長い。なんか億劫。てことで穂高に何度行っていても行く機会のなかった「横尾本谷カール」に一泊で行くことに。水流さんも加わってくれたおかげで、もう飽き飽きの上高地〜横尾の歩きも気が紛れた。

 地形図を見ると横尾本谷を分断する尾根が南岳に上がっている。南岳東南稜。横尾本谷からこの稜を登れないかと検索したが、情報はほとんどなし。行ってみて登れそうなら、ということで入山。

 穂高に行くのに登攀具もロープも無しなんて、なんて軽くて贅沢な。こんなんでいいのか?本谷は想定していたより水量が多く、とはいえ巻くと藪がうるさいため、可能な限り水際ぎりぎりを行く。きわどいへつりや大岩ボルダーがあり、楽しい。途中雪渓も難なく通過。軽アイゼンを用意していたが、使わず。やがて傾斜はなくなり、小川、高山植物、岩と草原が織りなす情緒ある景色と小鳥がさえずる天国が広がる。涸沢よりこぶりだけど、人が入っていないぶん稀少で美しい。穂高の「ラスト・フロンティア」。この楽園、登山道が拓かれ、容易に訪れることができるようになると、「失楽園」になってしまうに違いない。

 東南稜は上部がガスって見えず、結局ダイレクトに横尾尾根のコルへ上がる。

 2日目は岩稜縦走。南岳から大キレット、涸沢岳、奥穂、吊尾根から重太郎で岳沢へ。出発してほどなくして日が当たりだしたところで日焼け止めをぬる。日焼けによる疲労は侮れず、翌日以降に尾を引く。水分補給、エネルギー摂取、ウェアの脱着など、快適に行動できるよう面倒がらずに行う。とくに水分とエネルギー補給は自分が摂取しやすく、且つ行動の邪魔にならない携行方法をとれているかが大事だと考えている。さらには、バックパックが山行に最適な容量で、体にフィットして十分な機能性があることも、より良いパフォーマンスを発揮するために必要なこと。自分の体(体力)の仕上がり具合とともに、こうした快適に登山するための諸々の要素を確認したいと思っていた。

 要所でかなりしっかり休憩時間をとったものの、参考コースタイム12時間半のところを、7時間50分で歩く(途中走ったけど)。8時間程度で踏破することを想定したため、「こんなもんだろう」と思う。ただ、翌日以降にたいした疲労が残らなかったのは、コンディションの良さだろう。多少筋肉痛が出たが、膝痛も出ず、調子悪かった腰すら悪化することはなかった。このコンディションを維持できたら、いや、さらに体力を往時のレベルに戻せたら、それなりに厳しい登山もまたできるだろう。そんな可能性も感じた。

 水流さんにはトレーニング的な山行につき合わせてしまったが、足を引っ張られることもなく、大きく遅れずに追いてきていて、「強いな」と思った。おかげさまで楽しい登山ができた。ありがとうございました!