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|山行日|2022年8月5-7日|
|山域|北アルプス|
|ルート|北鎌尾根|
|メンバー|師田、水流|
*記録
8/05 上高地5:30-7:50横尾-10:05大曲-11:10水俣乗越-12:50北鎌沢出合13:10-15:40 北鎌のコル-16:30北鎌尾根TS
8/06 TS 5:15-7:10独標基部-7:35独標直登9:05-9:25独標-11:55北鎌平-12:55槍ヶ岳13:15-13:35肩の小屋14:05-17:40横尾TS.
8/07 TS7:15-10:10上高地
記録:
5月の連休あたりに師田さんから「北鎌尾根行かないか?」とお誘いを受けた。独標の直登がメインとの事。ただでさえハードルの高い北鎌尾根に直登が加わると私には無理ではと、一か月ほど悩んでいたがそれなりに力量を見て下さってのお誘いだろうと、都合よく受け取りご一緒をお願いした。
いざ行くとなると、凛とした独標の直登に燃え(萌え)た。
山行前の8月3日~4日は東北、上越、富山で線状降水帯が発生して災害が発生し、一部は黒部にも掛かっていた。山行予定日の天気予報はサイトで全く違い「5日は大雨で6と7日は雨」の所もあれば「5日は曇りで6日は晴れ7日は午後から雨」(←ヤマテン)の所も有った。
北鎌は一に体力、二にルート取りと言われているので、ガスでルートを間違えると大変な事になると、前日の朝に「悪天候の予報を出しているところもありますが」と師田さんへ相談すると「ヤマテンはまずまずの予報を出しているし、5日は曇りなので突然の夕立の可能性は低いのではないか。」との考えを伺って、成程と安心した。
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8/5
当日、上高地を5:15に歩き始める。空は雲が掛かっているが明るく、徳沢の辺りから青空になり、明神や前穂高が綺麗に見え、時折足を止めて登攀ルートを教えていただく。
横尾を過ぎ、ババ平の水場で給水して大曲に着く頃には曇りとなる。日差しがやわらぎありがたい。
ここから水俣乗越まではジグザグの急登だ。ヒイヒイと登り1時間半で水俣乗越に着いた。標高は2500mでせっかく上高地から900m上がったが、ここから北鎌沢の出合まで700m下る。急斜面なうえガレガレなので、滑落しない様に落石を起こさないよう慎重に下る。
傾斜が緩んだ先の北鎌沢の出合にはケルンが有るとネットの情報に有ったので探しながら下るが一向に見つからない。師田さんに「ケルンが有るんですよね」と聞くと「そんなの冬季の雪崩一発で無くなっちゃうよ」と一笑された。師田さんは流石に慣れていてドンドン進み、無事に北鎌沢出合に到着する。
噂では平坦で水のある幕営適地との事だったが、でかい石が河床を埋め尽くし、水は浸透して流れておらずとてもそんな所ではなかった。師田さんもこんなに荒れた事は今までなかったと驚かれていた。
休憩して北鎌沢を登る。左股との出会いで水を3リットル取ってザックに詰め込むと流石にズッシリとする。右股を登るが結構な水が流れていて、倒木を潜ったりチョックストーンをバックアンドフットや這い上がり進む。もう沢登りだなと思ったが北鎌沢右俣なので当然遡行なのかと納得する。
2時間半の辛い急登だったが、師田さんの的確な判断で間違った枝沢に迷い込むことなく草付きの踏後へ出て北鎌のコルへ着いた。
ここで幕営を予定していたが、羽虫がとても凄いので、風のある稜線を目指す事にしたが、1時間程歩いた所で疲れ果て、虫に妥協してテントを張った。
張り終えると二人とも相当疲弊していたようで30分程一眠りをしているとテントを叩く雨音で目が覚める。ポツポツだったが次第に強い降りとなりザーザー降りとなった。「いい所でテントを張りましたね」と話しながら、ドライフードの夕飯を取り、ザックの隙間にやっと持ち込んだ小瓶のウイスキーの紅茶割りで今日の苦労と明日の成功を願い乾杯した。
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8/6
3:00に起床の予定が寝過ごしてしまい、3:50だった。朝食を取り、行動を開始する。天気は晴れているが、朝焼けが強く出ていて、これから崩れて行くのではと心配になるほどの赤味だった。
先ずは独標を目指すが、樹林帯は踏み後が分かりづらい上に、ハイマツが引っ掛かって鬱陶しい。ハイマツは昨晩の雨で濡れていてズボンが濡れ、靴までしみてしまった。
2時間程の我慢の歩きの中独標の基部へ着いた。ここまで来ると樹林の背も随分と低くなり眺望が得られる。笠ヶ岳から黒部の山々、剣岳までとても綺麗に見える。
独標の登攀は2ピッチの想定で先ずは師田さんがリードする。お助け紐が付いた取付きは当然フリーで行かれる。
最初が悪い様で中々足が決まらない様だが、背面の岩を使ったムーブを決めて突破された。その後、順調にロープを伸ばして30m程でピッチを切り、フォローで続き、2P目は私がリードする。階段状で優しいが、浮石だらけなのでホールドの岩が信用できず、禿げないように押しながら体を上げて行くと、今度は両側がスッパリと切れ落ちた7メートル程のナイフリッジになった。初めは右側に1cm程の足掛かりがバンドの様に続いているのでそちら側を行くが、それがなくなると左側へ移る。観察すると、手はナイフリッジの頂点をカンテとして豊富にあるが、ツルっとしたフェイスで足置きが難しく小さいジブスがポツポツ有る程度だ。クライミングシューズなら何てことは無いが「登山靴で乗れるのか?落ちたら支点の位置から相当振られてただでは済まないぞ」と自信が無い中、意を決して左足で乗り込むと乗れた。手を進めて足を入れ替えて、左足はスメア気味に手を送って無事乗り切った。我ながら落ち着いて行動できたと思う。
独標終了まであとちょっとだが、50mロープ一杯になったので、仕方なくピッチを切る。師田さんを迎えて3P師田さんがリードするが10m程で「水流さん終わり」の声。フォローで登り師田さんが待つなだらかなハイマツ帯へ出てここで登攀が終わった。ロープを解き歩いて独標へ着くと苦労して歩いてきた北鎌のコルからの稜線を眼下に望む。
独標を過ぎると森林限界を過ぎ、思い描いていた通りの両側が切れ落ちたガレガレの稜線歩きとなる。思いもよらないデカい石が普通に動くので、全く油断できず慎重に歩を進めていく。
残念ながら、槍ヶ岳はガスの中で見る事は出来ないが背面の黒部側は依然素晴らしく、疲れたら振り返り活力を貰う。
北鎌平手前に有る明瞭な巻道を進むものだと思ったら、「あれは行ってはいけないよ」と師田さん。稜線はどんどん上昇するのに巻き道は標高を上げずに進んでいる。もし、行ってしまったらガレガレの急斜面を登ってルート復帰しなければならず大変危険なので、稜線は外さないのが基本との事。事前情報で得ていたがとてもしっかりした踏跡だったので、何の疑いもなかった。ヤッパリ北鎌は難しく、今まさに挑んでいるだと気を引き締める。
この頃から大槍がガスの中にうっすらと表れだし、北鎌平に到着した時にはガスも抜け、槍ヶ岳本峰が青空の下に堂々とした山容を現してくれた。
大槍は傾斜こそ強いがガバ続きで難しくは無いが、ヤハリ落ちたらただでは済まないので慎重に登る。チムニー状を進むと、山頂の祠が見えた。山頂にいた登山者に写真を撮られながら登頂すると拍手とお疲れ様の声をかけていただいた。なんだか誇らしい。
終わってしまうと辛かったが、実に充実した北鎌尾根だった。
祠にお参りし、写真を撮って15分ほどの滞在で槍ヶ岳山荘へ向かう。
ヘリポート脇からバンドを進むと子槍の取り付きと有ったので容易に見つかるかと思ったが、結局分からず、お互い疲労も強かったので今回は子槍を諦める事となった。
小屋でネクターを買って(コーラは下山までお預け)師田さんと乾杯すると五臓六腑に染み渡る旨さだ。
今日中に上高地へ下りたい所だが、既に13:30となり、さすがに厳しいので横尾を目指して下山開始する。
1600メートルの一気下りはさすがに足が棒となり、気力で下り17:00横尾に付いた。先ずは待望のビールで乾杯し、一息ついてテントを張り、屏風岩を見ながら杯を重ねた。
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8/7
5:30頃起床して軽く朝食を取り上高地へ向かう。今日はゆっくりとハイキングだ。
徳沢園でソフトクリームを頂き、明神館から右岸側に移り河童橋で待望のコーラとソフトクリームを満喫した。
帰路は中の湯で汗を流して、早い時間に行かないと売り切れていて、中々食べれないという蕎麦カフェぐりんでるで、本日最後の麺に奇跡的に有り付き堪能して解散となった。
ずーと憧れだった、クラッシックルートの北鎌尾根ですが、今回、師田さんにお声かけ頂き、遂に行くことが出来ました。
前半は急な北鎌沢の遡行とハイマツをかき分けながらの鋸尾根のアップダウン、後半は緊張のガレガレ稜線と厳しい山行でしたが、山頂に至った時はその厳しさが有ってこそ得られた大感動でした。