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山行リスト/2019/12/14/裏同心ルンゼ のバックアップ(No.2)


山行日2019年12月14日
山域八ヶ岳
ルート裏同心ルンゼ
メンバー丸山、水流、師田、梅原、土肥

記録

■山行記録:
前夜発で裏同心ルンゼを計画した。近年温暖化の影響か12月に入っても積雪と氷結なしという状況が続く。赤岳鉱泉のブログ「鉱泉日誌」に裏同心ルンゼやジョウゴ沢の情報がこの時期アップされとても便利になった。今シーズンは12月1週目から凍り始め、この山行が14日なので2週間で出来上がったルートになる。いつもどおり道の駅で仮眠し5時に起床して朝食を食べた後、美濃戸までの車道を何時になくゆっくりと進む。昨年鹿に衝突されたため次は被害に合わないよう色々対策を調べてみた結果、地元の人はゆっくり走れば殆ど回避できるということらしい。美濃戸の駐車場まで一切雪はないが気温はマイナス8℃と程よく寒い。皆身支度を済ませいざ出発と思いきや水流さんのザックがやけに大きく何を持ってきているのか聞くと使わないジャケットなど数点を降ろし、まだ皆に比べて大きいがあとは本人に任せることにした。いつもより早く6:45に美濃戸駐車場から歩き出し、赤岳鉱泉に着いたのは7:50。鉱泉付近でようやく雪が出てきた。雪が少なくいつもと景色がだいぶ違うので裏同心沢を通り過ぎジョウゴ沢まで行ってしまった。すぐ引き返し裏同心沢を歩く。いつもより水量が多く凍っている部分も多い。これは結構期待できると思いF1に到着すると見事にしっかり凍っている。先行3パーティで僕らは4番目。今回は5名なので丸山P(水流、師田)、梅原P(土肥)の2パーティに分けて登り始めた。8:30頃登攀開始。今回は致命的に遅い他パーティはいないようなのでそれほど飛ばさずに登り進む。途中歩き部分でロープ出しているパーティを追い抜き、F3は幅が広く凍っていたので先行Pと別ラインを登り、次のナメ滝はコンティニュアスしたので、残るは先行1Pとなった。F4に着き時計を見ると10時前なので結構余裕がある。先行パーティのトップがスタートするところだったので暫く待つことに。水流さんのこれまでの登りは安定してきているので、ちょうどF4の右からスタートし左上すると階段状になっているラインがあったのでリードをオススメした。先にお手本となる師田さんに登ってもらい、その後を水流さんが登る形。初めてのリードなので登るラインのオブザベーションとギヤの整列をした後スタート。予め確認した階段状ラインを登るつもりが難しくなる直上ラインを進んでしまい。修正のため左へトラバース。ここでスクリューを設置し気を取り直して、左上のつもりがまたもや直上に行こうとするため方向修正した。階段状の安定したところで2本目のスクリュー設置ののち抜けることができた。初リードおめでとう!! 続くF5も氷結状態は良くアックスの刺さりも良い、短期間で凍ったせいか大小ブロック状に壊れやすい。先行PはF5を上がったところで支点形成しピッチを切って次の右ナメ滝を登攀途中であった。こちらはいつもなら直上であるが、珍しく右ナメ滝も途切れなくしっかり凍っていたので先行Pの邪魔にならないライン取りで右ナメ滝に取り付く。しかしピッチは切らずにF5スタート位置から伸ばしている。右ナメ滝の中間あたりを登っている時、先行Pのビレイヤーが「人が滑落した!」と叫んだ。何が起きたのか判らず、とりあえず登攀中だったのでそのまま登りきり支点形成まで済ませた。このピッチ右ナメ滝を登る際はF5を上がったところでピッチを切ることをお勧めする。次の支点形成にしっかりした立木が使える。使用ロープは60m。(続きは他パーティの事故報告)



■他パーティの事故報告1:丸山(事故当時の位置:F5終了後の右ナメ滝)
裏同心ルンゼ F5終了点 から滑落者あり。
原因はF5終了点付近で終了支点形成時に足を滑らす。スクリュー2本を氷上に設置したがセルフビレイが取られていなく滑落した。

事故当時11:00頃 丸山Pはトップ丸山、2nd師田(ビレイ)、3rd水流、の体制でF5基部にスクリューでセルフ形成して登攀中。トップ丸山はF5を登り終え、そのまま60mロープを伸ばして右スラブ中間付近を登攀中。同時に佐藤祐介ガイドパーティ3名も登攀中で佐藤PはF5終了位置からビレイ開始し右スラブ3/4付近をトップで佐藤が先に登攀中。その時、佐藤祐介ガイドパーティのビレイヤーから、人が滑落したと知らせがあった。佐藤、丸山は共に登攀中であった為登攀を継続し終了点形成後2ndを引き上げ。佐藤Pの2nd3rdが先に登り終え、丸山Pは2nd3rdの引き上げを開始し、しばらくして水流さんが先に登ってくるのが見える。師田さんロープは手繰ると軽く何も繋がっていない。もしや滑落者は師田さんと思ったが、確実にデイジーでセルフビレイしたことも確認していたので、自分のロープを解いて救護に向かったのだと確信した。水流さんが終了点に到着しF5で起きた状況を聞いた。師田さんはロープを持っていないが梅原P(2nd土肥)はF5に到着しておりロープを計2本持っているので、救護後3名(梅原・土肥・師田)で大同心基部まで登るまたは懸垂下降で下山可能である。

丸山P(水流)と佐藤Pは大同心基部経由で大同心稜へ到着。丸山Pは大同心稜上部で1時間ほど梅原Pを待つが上がってこないので、風が避けられるハイマツ帯まで下りさらに1時間ほど待つ。その間4パーティ12名ほどがF5からトラバースして大同心稜と合流するルートから上がってくる。救助ヘリが事故現場上空でホバリングを5-6回試みるが不安定な突風のため断念して引き返す。更に下ったところからF5からのトラバースルートが見えるところで梅原Pが来るか確認していたところ、大同心稜上部から降りてくるのが見え合流した。合流したのは丸山・水流・梅原・土肥の4名で師田さんの姿はなく救護を続けているとのこと。トラバースルートから師田さんを連れ戻すことは滑落者から救護者を引き剥がすことになるし、事故通報はされていることから救助は救助隊に任せ、素人が救助に向かうことは考えないようにした。この判断から4名は赤岳鉱泉まで下り小屋で救助状況を確認することにした。

14時頃に赤岳鉱泉へ到着し、立川山岳会の山行連絡MLへ連絡。小屋で救助状況を確認するが小屋には救助情報は上がっていなかった。しばらくして同ルートを登攀してきたパーティが師田さんからの伝言を小屋と立川のメンバーへ報告。伝言内容は「師田さんのスリングをトラバースルートと大同心稜の合流地点に目印として木に掛けておいたので救助の際に目印にして欲しい。」 この内容から、師田さんは最後まで救護するのだと確信した。外はマイナス10℃以下で事故から5時間ほど経過。滑落者も危ないが救護している滑落者のパートナー女性と師田さんも低温の危険にさらされている為、鉱泉小屋で待っている僕らも心配でならなかった。
しばらくして、小屋へ無線連絡あり。長野県警山岳遭難救助隊(県警救助隊)と諏訪地区山岳遭難防止対策協会(遭対協)の5名が赤岳鉱泉へ向かっているとのこと。(のちにわかったこと:明日から赤岳天望荘の小屋開き準備で遭対協のメンバー(民間)は美濃戸口の八ケ岳山荘に待機していた。)

15時過ぎに赤岳鉱泉へ救助隊が到着。事故状況やルートコンディションなど我々と打ち合わせた後、救助に15:30頃出発。予定では大同心稜を登り、師田さんが置いたスリング位置からトラバース開始してF5事故現場へアプローチし、同トラバースルートにFixロープ設置して滑落者を背負って救助するとのこと。順調に進んで4時間後に赤岳鉱泉へ戻る予定(最短で19:30の見込み)。 全員今日中に下界へ下ろす目的で救助へ向かうとのこと。救助隊に待機メンバーができることはあるか尋ねたところ、「小屋で待っていてください」と言われた。
在京の遭対係と複数回状況報告と今後の行動についてメールでやり取りした。電話は一部通じたが、電波不安定でほぼ通じず。メールも小屋外の高台で通信可能で頻繁には送受信できなかった。

21:30救助隊から小屋へ無線連絡あり。「救助したのでこれから下山する」 滑落者の安否は伝えられたが、滑落者のパートナーと師田さんの2名の情報はなし。2名は要救護対象ではない。つまり低体温等で動けないわけではないと推測。

22:45全員赤岳鉱泉に帰還完了。滑落者は背負われて帰還。滑落者のパートナーと師田さんは歩いて帰還。立川山岳会としては師田さんの安否を最大限心配していましたが、全くそれを裏切るかのごとく元気に帰還し、小屋に到着しても滑落者のバイタルを確認し医師としての役割を全うしていたのには驚きでした。そしてかなり遅い時間まで師田さんの帰りを諦めず皆で待っていて良かったと思います。救助隊に言われた「小屋で待っていてください」の意味がわかりました。県警と遭対協と医師の連携で滑落者は無事に救助され、下界の病院まで当日中に搬送できたのは医師の判断による影響が大きかったと実感しました。

23:00下山開始 師田さん含め5名全員で美濃戸へ下山し、堰堤で八ケ岳山荘のオーナーが車で迎えに来てくれました。八ケ岳山荘到着後カレーをご馳走になり、24:30に八ケ岳山荘を出発。師田さんとは車を停めた小淵沢道の駅でお別れし帰路に就きました。



■他パーティの事故報告2:師田(事故当時の位置:F5とりつき)
事故発生時、宙から舞って落下し、激突したのを目前で見て、とっさの判断でビレーを水流さんに替わってもらいました.
現場での診断は骨盤骨折、胸部打撲(肋骨骨折)ただし血気胸のような生命の危険を伴う肺損傷はない、との判断でしたが、諏訪中央病院での診断も骨盤骨折に軽い気胸とのことのようなので、大きく外れてはいなかったかな、と思います.
診断つけても現場では何もできず、ただ低体温で状態が悪化しないうように心がけていました.もともと楽天主義で、快晴・風は強いけど沢筋の変な気流の乱れがなければ絶対にヘリで救助してもらえる、と信じて疑っておらず、明るいうちに鉱泉に降りれたらジョー御沢の代わりにアイスキャンデーでもいいかな、とか能天気に考えていたので、救助ヘリがホイスト直前の体制から回避して消えていくのをみて、さすがにちょっとまずいかな、と危機感を持ちました.

大同心稜への目印は僕でなく、トラバースするpartyにお願いしてつけてもらいました.F5でブロック落とされると逃げ場がないので、後続partyには皆、状況を説明してF5から大同心稜に向かってもらいました.

県警からの連絡では5時ごろ現場到着予定、ということだったので、実際には4時半過ぎには来るだろうと踏んで待っていたのですが、声が届いたのが4:45くらい.そのあとはこちらは笛で位置を知らせ救助隊のヘッドランプを確認したのがその5分後くらいでした.昔は3種の神器、と行って笛・ナイフ・コンパスを必ず肌身離さず持参したのですが、今は堕落して持っておらず遭難者のを使わせてもらいました.恥ずかしい限り.

転落してからの一連の経過を経験して僕なりに感じたことを以下にまとめます.

1. 通常であれば生命を失ってもおかしくない状況だったが、落下途中でF5に一度激突し落下時の衝撃が幾分なりと和らげられたこと.
2. 隆起した岩でなく、平らな氷面に腰から落下したこと.頭からだったらヘルメットしていても頸椎損傷でどうなったか、とおもいます.きっと強運の持ち主なのだと思います.
3. ザックを背負っていたので、脊椎への直接打撲・損傷がなかったこと.クッションがわりのザックが果たした役割は大きいです.
4. ツェルトは僕のを使用しましたが、本人が羽毛パンツ、緊急ビバーク用シュラフなど持っていて、保温を二重三重に図れたこと.
5. 意識があり、かつ腹部損傷の可能性は低いと判断できたので、小まめにテルモスの飲料・経口摂取を図り低体温予防ができたこと.
6. 本人、パートナーともしっかりした人で、事故によるパニックを生じることがなかったこと.おかげで僕もだいぶ楽かりました.
7. 基本的な問題として、本人の身体が強靭で最小限のダメージで済んだこと.骨盤骨折はあっても致命的な血管損傷を合併していなかったことが大きいと思います.精神的にもタフな方で、待機中、搬送中通し痛みは本当に最小限しか訴えることなく、救助作業をスムーズに進められた大きな要因と思います.

最後に、丸山さん、梅原さん、水流さん、土肥さんには状況連絡も取れず、遅くまですっっかりご迷惑をかけたにも関わらず気持ちよく受け入れていただき、本当にありがとうございました.鉱泉からの下りはヨレヨレでしたが、丸山さんにザイルを持っていただき助かりました.それやこれや、皆さんには感謝しかありません.
今年は雪が少ない分、アイスは長い距離を遅くまで楽しめるのでないかと思うので、年末・年明け、また機会があったら是非声をかけてください.



■他パーティの事故報告3:梅原(事故当時の位置:F4ナメ滝)
今回の裏同心は雪がほとんどついてないので各滝はそこそこの高さがあった。
F3上がると前方にF5が見える。フォローの土肥さんを迎えて先に歩いてもらう。ロープを束ねて後を追っていくと、青のヤッケの男女パーティーが叫び声と共に落ちたのが見えた。 最初は叫んでいた女性が落ちたのかと思ったが、後で男性が落ちたとわかった。
二人はF2あたりで追い抜かれたので遠目ながら装備やウェアにも見覚えがあり、技術的にもフォールするようなレベルではなかったはず。
先行する土肥さんに追いついて呼び止める。 どうやらだれか落ちたようだと告げて注意喚起を促した(つもり)。
F4は滑滝で短い。ロープ不要と判断したのでそのまま上がることにする。土肥さんが怖いと思うようならスクリューでプロテクションとるように伝えたが問題ないとのこと。
滑10m程上がってF5。既に師田さんが持参していたツェルトで滑落した男性を包んでサポートしていた。
パートナーの女性が電話で救助要請していた際も師田さんの所見を伝えながら指示を出している。
師田さんが落ちた旨私に合図して来たが、現場からは一目瞭然。おそらく腰から落ちただろうから起き上がれず辛そうだった。
さて、どうするか。現場には他に2パーティーがいたように思う。状況を見ながらいつまでもここにいても仕方ないと判断し上に抜けて、残置スクリュー、ヌンチャク、ロープを回収することにした。
F5は7-8m程度の滝だが見上げれば2本のスクリューが打たれていた。目視していた感じや現況から上部に抜けた後に落ちたことが伺えた。
師田さんにどうするつもりかと聞くとこのままトラバースしてどうにか降りるつもりだ、とのこと。一人でも懸垂で降りれよるよう使ってない土肥さんのロープを出するよう伝え、師田さんにロープを置く旨伝えるもいざとなれば滑落者のロープがあるから大丈夫、というような趣旨で辞退された。
他パーティーとの状況整理と準備が整い、最期にもう一度師田さんはどうするか?と聞いたが残るというような意思表示だったので梅原・土肥は回収作業に入る。
念のためセルフをとりながらスクリューとヌンチャクそれぞれ二つを回収。
この時点ではヘリの搬送を想定していたためビレイ中の土肥さんに投げ渡していた。落ち口上がって2〜3m歩くとスクリュー2箇所、うち一つに90-120cmスリングにカラビナが掛けられていた。アックスも一つ残されている。
こちらも回収する予定でいたが、ここでノープロテクション作業はまずい、と直感する。
落ち口を上がる前に打ったスクリューからここまで既に6-7メートルは距離があるので落ちたら自分も二の舞。ルンゼの岩顎上がった処に懸垂支点があるが、雪が付いてないのでこちらに上がって支点構築にするのも簡単ではない。
少し悩んだが結局、残置スクリュー1箇所からプロテクションを取り、一つだけ回収、そのまま上まで詰めることにした。
土肥さんを迎え基部に上がってからトラバース。少し降った樹林帯で丸山さん、水流さんと合流。
ここから先は丸山さんの報告へ続きます。

梅原の見解
残されていたアックスと残置スクリューの位置での作業はかなり'いやらしかったのではないか。回収するのも膝をついてかがんだ姿勢での作業がかなり不安定だったし、何よりノープロテクションでの作業は避けた方が良かっただろう。
今回の裏同心は雪が付いてなかったため落ち口を乗越すのがそれなりに神経を使った。雪でアックスの先端を圧着して上がることが出来なかったことに加え、固く面で割れやすい氷なので落氷もある。
滑落者がどうしてあの位置でビレイ支点を構築しようとしたのかはなんとなく想像できるようでもありクライミングの技術や力量とは異なる事故だけにだれでも起こりることのようにま感じた。




最後に、在京の遭難対策メンバーについては通信状態悪いなか的確な指示をありがとうございました。また滑落者のパートナーとめっこ山岳会代表から御礼のメールも頂いています。