山行リスト/2025/1/13/阿弥陀北稜〜赤岳主稜
山行日 | 2025年1月14日 |
山域 | 八ヶ岳 |
ルート | 阿弥陀北稜〜赤岳主稜 |
メンバー | 三ツ堀 |
記録
今冬初の雪山。8日の計画だったが、その日は荒天予報になり13日に延期する。
前夜小淵沢道の駅で車中泊し、準備して3:30ごろ発。美濃戸口に車を走らせていたところ、ライトの光範に突如牝鹿が現れる。ハイスピードで車の正面に巨体が迫る。
「ウォー!」
術なく激突。跳ね飛ばすほどの衝撃を感じ、前方で停車して車を見ると、前部が壊れちゃってる。「鹿は?」と後方を見たが、闇に紛れて鹿は見えない。
「やっちまった」
車は問題なく動くし、ならば山に登らずに帰る理由がない。そのまま美濃戸口へ向かう。
運転中、鹿が一瞬にして迫ってきたあの刹那、カメラのシャッターを切ったかのように鹿と視線が交錯した残像が脳裏をよぎる。野生の目は、確かに自分を見ていた。そして、実際に視界にはいなかったが、子鹿を見たような気がした。習性として自ら光に突っ込んできたにも関わらずなお、その目には生きようとする意志が見てとれた。あの一瞬に、どれだけ多くのメッセージが込められていたのだろう、と思い返す。
「クソッ、鹿め!」
と思ったよ。そりゃね。
なぜそう思ったのか?何か、そこに改めるべきことがあるような気がする、大事な何か。
だからか、今回の山行は、この鹿激突がほぼ全てといっても良い。
壊れた車のまま、4:30に美濃戸口を歩き始める。
捻挫明けのリハビリ的な山行で、鹿の一件もあってメンタル的にも決してコンディションが良いわけではないが、登り出せば集中できるような気がした。
7:00前頃行者小屋着。上部はガスって視界は良くない。身支度を整え阿弥陀北稜へ。先行者なし。北稜の岩場は案外雪が乗っていて、分厚い冬季グローブでのホールドがリスキーに感じ、一旦降りて薄手のグローブに変える。それでも露出感があって悪く、A0で抜ける。


早速足が攣り出す。短い登攀パートをこなし、風に吹かれながら誰もいない阿弥陀山頂に着く。
中岳沢のコルから中岳を越え、文三郎道分岐へ登る。ここはいつも風当たりが強く、体力的にも辛い。だから赤岳主稜はやらずに、このまま下ってしまおうかとも思う。
文三郎道の主稜へのトラバースポイントまで来て、主稜を見上げる。2パーティーほど取り付いているのが見える。逡巡した挙句、取り付きへ向かう。
歩いているより登っている方がラクだ。先行さんに待たされたピッチもあったものの、1時間余りで赤岳山頂に達する。
再び文三郎道を降り、行者小屋12時、美濃戸口に13:50。
下りでは太腿が痛くなった。アルパマヨ登頂日の下山でもあったが、これは足の筋力が低下してきているせいだと思われる。そして右足首の捻挫は、さすがに距離を歩くと痛みが出て、林道を走ることはできなかった。
白日の下にさらされた車の破損部を見て思う。
「やっぱ、あれは夢じゃなかったんだ」
亀裂には鹿の毛が残っている。それは、鹿の思い出。

