トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS

山行リスト/2023/4/1/鹿島槍東尾根

Last-modified: 2023-08-14 (月) 21:03:55 (423d)
Top / 山行リスト / 2023 / 4 / 1 / 鹿島槍東尾根
山行日2023年4月1日
山域北アルプス
ルート鹿島槍東尾根
メンバー三ツ堀

記録

鹿島槍ヶ岳東尾根は、第二岩峰まで登って敗退したり、南峰ダイレクト尾根は北俣本谷の状態が悪くて取り付けなかったりで、鹿島槍のルートは一度も登れたことがない。

 鹿島槍の北壁主稜や正面ルンゼをやりたい。でも鹿島槍っていう山をもっと知っておく必要がある。岩場でオンサイトを狙うなら、その岩場の他のルートを登って岩を知っておくのと同じ。

 計画上はオーソドックスに1泊2日。でも1Dayでやろうと決めていた。

迷ったのは装備。日帰りなら宿泊装備は要らない。でも状況次第ではビバークにもなる。それとロープを含めた登攀具はどうするか。宿泊装備もロープも持っていかないならどんなにラクかと思う。だけどその分不安も大きくなる。装備の量は登山力を如実に表す。力量があるほど少なく、軽くできる。

 以前の東尾根敗退メンバーは妻ともう一人の3人だったが、その後、その一人は同じ東尾根で遭難してしまった。そのせいか妻からは「ロープは持っていって」と言われた。ソロで行く時に、結局ロープは置いて行くかもしれないとも思ったが、30mシングルの用意だけはした。宿泊装備も、ツェルト(ペグは必要最低本数)、軽めの寝袋、110ガス缶とコッヘル、ぎりぎりの1泊分の食料をザックにつめる。

 前回の屏風偵察での戦略的失敗から、ウェアや水分、エネルギー補給も改善する。もう往時の強靭な体力では押し切れない。

 

 大谷原駐車場を3:20発。東尾根の取り付きがどこだったか、全く記憶になく、真っ暗な林道でどうも取り付きを逃したらしい。かといって戻って取り付きを探す気もおきず、一ノ沢を過ぎたあたりで、適当に右の斜面に突っ込む。一ノ沢を横断し東尾根に行こうと思ったが、うるさい薮に方向的には戻るのが気重で、一ノ沢ノ頭の南に伸びる尾根に出てみることにする。地形図を入念に見て、狙うラインを決める。行手は岩壁に阻まれ、進む先に惑う。ようやく明るくなり、左の谷へトラバースすると、ルンゼを発見した。雪は切れ、人跡皆無の汚いルンゼを登ると、南尾根に出られた。ここから息の切れる尾根を登ると一ノ沢ノ頭。6:40。これから登る東尾根が一望できる。

 取り付きからルートミス(?)でロスしたが、まだ十分1Dayは可能だ。先にスキーを担いだ2人が先行している。雪稜をたどって、第一岩峰手前で追いつく。東尾根に取りついたのは自分より後らしく、取り付きミスによるロスは30分くらいか。第一岩峰は雪が切れてクレバスになっており、2人に先行して左の岩場から取り付く。雪壁を抜けて、またひたすら雪稜をたどる。

第二岩峰で、アルパイン系動画をアップしているユーチューバー(https://www.youtube.com/@yamapitochannel4258) に出会う。ここに集まった4人ともが東尾根1Day。今やこのルートも日帰りが当たり前なのか?ロープ出すなら第二岩峰だと思っていたが、コンディションが良くここはフリーソロで抜ける。前回はここでホワイトアウトになり敗退したが、今回は快晴。爽快な雪稜を辿り、鹿島槍の北峰に達する。10:00。標高差1800mを6:40か。水分補給やウェアの調整など、快適さに気を配りながら、それでも足は攣ったりしたが、今の体力にしては上出来かな。

下りはどうするか迷っていた。赤岩尾根か西沢は、さらに南峰〜布引山〜冷池と延々2〜3時間歩かないとならない。北俣本谷を降りられたらどんなにラクだろうか。ただ、春は雪崩がやばい。北俣本谷アプローチのダイレクト尾根はそれで敗退したのだ。コルから北俣本谷を覗き込む。上部は安定しているが、谷底は豪勢にデブリが出ている。雪質を確かめる。雪崩れる可能性はあるかも。北俣本谷を降りないなら、赤岩尾根まで延々歩くしかないが、それでも十分明るいうちに降りられる。でも・・。

5分くらい迷っていただろうか。試しに右足、左足と谷に向かって四つん這いに足を下ろしてみる。「試しに」のはずだったが、タガが外れてそのままクライムダウンしつづけてしまった。雪崩落石危険地帯に突っ込んでいる?いや、この雪なら大丈夫だ。思いはいったりきたり。後ろ向きのクライムダウンに疲れてたまに正面向きになっても、2、3歩で雪に足をとられ、滑落しそうになる。滑ったら止まりそうもない。仕方なく、ひたすらクライムダウン。ふくらはぎも疲れてきて、デブリ地帯に突入する。そこで正面の細いルンゼから雪崩。傾斜が緩んでからはシリセードを交え、デブリ地帯を止まらずに進む。鎌尾根基部でアイゼンを外し、滑り下り、林道に合流。車に戻ったのは13:35。

鹿島槍東尾根、1Day。結果的には宿泊装備も、登攀装備も使わなかった。水と食料だけのデイパックで行けたら、どんなにシンプルだろう。無謀と戦略的判断は紙一重だ。北峰から見下ろしたカクネ里氷河、北壁は、またおもしろい登攀ができそうな予感がした。